出田恵三監督インタビュー
出田恵三 Keizo Izuta- 1965年11月18日生まれ。89年に慶應義塾大学を卒業。在学中は探検部で活動。NHK入局後、94年から自然科学番組グループに在籍、「生きもの地球紀行」「NHKスペシャル」などの番組を多数制作。主な作品に、ジュール・ベルヌ映像祭最優秀科学アドベンチャー賞を受賞した「NHK スペシャル 地球大進化」(04/演出等)、第35回エミー賞ドキュメンタリー部門最終ノミネート作「NHK スペシャル 恐竜 vs ほ乳類」(07/構成・特撮)など。「Diving with the Great Whales」(97)では岩合光昭カメラマンと撮影を行い、また中村征夫カメラマンの「海中顔面博覧会」のTV版(00)も手がける。本作では撮影にも挑戦。
人もまた自然と一緒に生きている
- なぜ主人公のいきものたちにヒグマ・サル・イノシシ・ゼニガタアザラシ・キタキツネを選んだのでしょうか?
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今回の映画では、日本のいきものたちの「家族愛の物語」に焦点を当てました。そのため主人公になるいきものたちは、まず子育てや成長を継続して撮影できるか、そして家族の物語として私たちが共感できるか、その撮影場所が日本を象徴する自然か、という視点を大切にして選んでいきました。
まずは日本の陸上で一番大きい動物・ヒグマ。撮影の舞台は世界遺産にも指定されている知床半島。主人公にはすんなり決まったのですが、撮影は一番苦労しました(笑)。次にお馴染みのいきものとしてニホンザル。世界には200種類ものサルがいて、ほとんどが熱帯に住んでいます。青森県の下北半島に住むサルは、日本で一番北どころか世界で一番北に住み、とても珍しいと注目されています。
そして海のいきものからゼニガタアザラシ。海に囲まれた島国の日本は、実は海獣の王国です。ザトウクジラやシャチをはじめ多くのいきものが季節ごとに訪れてきますが、そのなかでも襟裳岬のゼニガタアザラシは、一年中日本にいる動物なんです。
キタキツネは夫婦で子育てをするということで選びました。哺乳類の子育ては、母親が中心で父親が参加することが珍しいため、家族の物語でこれは外せないと。でも、実際に撮影を始めたら、その家族の父親はどこかに行ってしまって、母と娘で子育てしていました。なかなか筋書き通りにはいきませんよね。
イノシシは、身近な里山のいきものの代表として選びました。撮影の経験もあまりなく、敢えてやってみようというチャレンジ枠でした(笑)。彼らは畑を荒らしたり人間にとっては害獣と思われることが多いのですが、日本のいきものとして、その本当の姿を伝えたかったことも理由のひとつです。
こうした主人公以外にも、撮影しているうちに、どんどん面白くなって主人公に格上げになった動物もたくさんいます。例えば、屋久島のサルとシカはその代表です。岩合光昭さんには九州の無人島でシカを撮ってもらう予定だったのですが、より原生の自然を舞台にしたいということで南の世界遺産の地・屋久島に向かいました。そこで、シカの背中にサルが乗るというなんとも不思議でユーモラスな関係を撮影することができたというわけです。
他にも、中村征夫さんには、魚を主人公に家族愛を表現するという難題に、カクレクマノミの子育ての楽しい映像でこたえてもらったり、最初の机上のアイデアをどんどん追い越して、いきものたちが活躍してくれました。